マイノリティーな彼との恋愛法
混雑するエレベーターホール。4台あるエレベーターはフル稼働。
待ち続けてやっと1台到着した。
ドドッと人が押し寄せる中、神宮寺くんは無情な言葉を言い放った。
「どうぞ、ご勝手に。春野さんは誰のものでもありませんから」
冷たささえ感じるその言葉に、彼を見つけてからずっと弾んでいた胸が沈んでいくのが分かった。
なにその言い方!なにそのどうでもいい感じ!
どうぞどうぞ、俺の許可なんて取らなくても勝手に仲良くやって下さいみたいな顔!
━━━━━いや、こいつは最初からこういう人だったんだっけ。
気乗りしない合コンにかったるそうに参加し、私の押しに負けて仕方なく食事を共にし、恋愛なんて面倒くさいと平気で言い、興味のなさそうな顔で私を見ていたんだ。
そんなの分かり切ったことなんだけど。
持っていたバッグの持ち手を、きゅっと掴む。
奇しくもそのバッグには、彼にもらったウミガメのキーホルダーがついていて。ブチッと外してヤツの顔面に投げつけてやろうかと迷うほどだった。
それならいいんだ、と柏木さんが微笑んだのを最後に、私たちの会話は途切れる。
エレベーターの中に流されるように押し込まれたからだ。
風花ちゃんとは離れてしまい、柏木さんも少し前の方に行ってしまった。
定員ギリギリの人数を乗せたエレベーターの、一番奥の壁際に私と神宮寺くんが何故か隣同士で乗るハメになった。
くそー、こんな気持ちの時にヤツと隣同士でエレベーターに乗ることになるとは!
ほぼ満員のエレベーターの中だと身動きも思うように取れない。