マイノリティーな彼との恋愛法

ポーン、という軽快な音がして背後でエレベーターの扉が開いた。
慌てて振り返ると、スーツ姿の男の人が乗り込んできた。

どこかで見たような…………?

首をかしげているうちに、エレベーターが動き出す。


鏡でクマのチェックをするのはやめて、大人しく1階までじっとしていることにした。



やがて、またさっきと同じポーンという音がして、1階に着いたことが分かった。
ゆっくりと扉が開く。

それと同時に一緒に乗っていた彼が「開」のパネルを押して

「お先にどうぞ」

と、かろうじて聞き取れる声でしゃべった。


2人だけしか乗っていなかったのに、わざわざ申し訳ない。
ありがとうございます、とお礼を告げてそそくさとエレベーターを降りる。

その際、なんだか気になってチラリと彼の顔を見上げたら、バッチリ目が合った。

ただし、彼は非常に不機嫌そうな顔をしている。
眉を寄せて、ついでに目を細めて、ほぼ睨まれているような顔つきだった。

ものすごい目つきにただただ怯え、エレベーターを降りてから振り向くことも出来なかった。


わ、私なにかした〜!?
お礼もちゃんと言ったし!!
怖っ!!


駆け足でビルを飛び出して、合コンが開かれている居酒屋へと急いだ。








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