マイノリティーな彼との恋愛法
……実は今夜、柏木さんとは会うことにした。
それは、前々から約束していたからではなく、イケメン御曹司との食事を2人きりでしてみたかったからでもなく。
好きな人がいる、と伝えて、中途半端に期待させるのはやめようと決意したのだ。
彼が私に好意を持ってくれているのは分かるし、これから少しずつ距離を縮めていってお付き合いを望んでいるのもなんとなく感じる。
お互いに好きな人もいない完全なフリーの場合なら問題はない。
でも私には好きな人がいる。好きな人が出来た。
それなのに柏木さんと2人で会うのはどうなんだろうって。
変なところが潔癖で、そして真面目さが出てしまうのが私の性格である。
たぶん渚あたりならば
「はぁ〜!?イケメン御曹司と結婚して玉の輿のるのをみすみす逃しちゃうわけ!?もったいないもったいない!とりあえず何回か食事行って、高級ディナーご馳走になっちゃえば?なんていうか、ほら、保険みたいな!神宮寺くんがダメだったらすぐに鞍替え出来るように、保険かけちゃえー!」
と、血も涙もないセリフを吐くんだろうな。
紙袋と一緒に持っている、いつも持ち歩いているバッグを見下ろす。
とっても平和な微笑みを口元にたたえ、小さなつぶらな瞳をこちらに向けてぶら下がる丸っこいフォルムのウミガメのキーホルダー。
私のファッションの傾向から考えると、到底こんなキーホルダーは似合わないのは分かっているけれど。
神宮寺くんにもらったものだと思うと、外せないでいた。
ウミガメグッズを身につけている限り、私はきっと彼に片想いを続けるのだ。
━━━━━恋愛する気がない奴を、どうやって動かせばいいのよ。
そもそも恋愛自体ご無沙汰な私には、その方法は思いつくわけがなかった。