マイノリティーな彼との恋愛法


なにもかもがクリスマスで彩られた街中で、のんびりウィンドウショッピングしたりお茶したり、自由気ままに過ごしているうちに夜になった。
柏木さんと連絡を取り合って待ち合わせをする。

待ち合わせ場所に向かう途中で、風花ちゃんがラインが送られてきた。


『バッチリこちらはマフラーが完成しました!今夜仕掛けます!春野さんも柏木さんと熱い夜をお過ごしくださいませ!下着は必ず上下セットですよ!可能ならTバックで悩殺しちゃって下さい!』

と、とてもじゃないけど人様には見せられないような内容の文章と、どこからどう見ても毛糸のこちゃこちゃした塊にしか見えないマフラー(らしきもの)を掲げて上目遣いで微笑んでいる自撮りの写真が二枚ほど送信された。

写真はどっちも似たような感じで、なんとなく顔の角度が違うくらい。


彼女の可愛らしい顔よりもなによりも、私としては彼女が手に持っているマフラー(らしきもの)の方が気になってしまった。


「これ…………渡されたら彼はどう反応するんだろ……」


色々と気になることはあったものの、ひとまず

『Tバックなんか持ってないけどね。笑』

と打ち込み、続けてネズミのキャラクターが親指を立てて得意気に笑っているスタンプを送り、詳しい話は週明けに話そうとスマホをしまった。


夜になった途端冷え込みが厳しくなってきたので、着ていたコートの前をぎゅっと合わせて小走りで待ち合わせ場所へ急ぐ。

ニットのタートルネックのワンピースにブーツという会社に行くよりも少しラフな服装は、今日行くという串焼き屋にはちょうどいい緩いスタイルなんじゃなかろうか。


待ち合わせ場所にたどり着くと、すでに到着していた柏木さんが小さく手を振って私を出迎えてくれた。


「こんばんは。来ていただいてありがとうございます」

「いえ、とんでもないです」


小走りで来たために乱れた前髪を手早く整えたあと改めて柏木さんを見ると、その素晴らしすぎる彼のパーフェクトな容姿に目を奪われた。


仕事帰りではないので、スーツではない。
綺麗めなシルエットのチノパンに、カジュアルな革靴。明らかに質の良さそうなコートを着て、中にはアーガイル柄の上品なセーターがちらりと見えた。
顔は言うまでもなく今日も超絶イケメン。
髪型は仕事の時よりもセットが緩かった。

はぁ、この人とクリスマスイブに食事なんてして、神様は許してくださるのだろうか。
身分違いもいいところだ。

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