マイノリティーな彼との恋愛法
道行く人が振り返る。
彼氏が隣にいる人も振り返る。
そりゃそうだ、私の傍らにはイケメンがいる。
こんなの初体験である。
「うっ、胃が痛い……」
なんでこんなフッツーの女と歩いてるんだよ、という同性の心の声が聞こえてくるようで、柏木さんの内側から発せられるイケメンパワーに圧倒された。
「え?胃が痛い?もしかして体調悪いですか?」
「あっ、違います!そんなことないです!飲む気満々で来ました!」
心配そうに私を見つめる彼と目が合わせられず、アハハと苦笑いした。
「柏木さんのような素敵な人なら、今日みたいな一大イベントの日に一緒に過ごしたいっていう女性も多いんじゃないですか?」
「全然。職場は男の方が多いし、出会いもあまり無いし。それを言うなら春野さんも誰かに誘われたりしませんでしたか、今日」
「そんな人いないです」
神宮寺くんなんて、「飲みすぎないで下さいね」とかなんとか言って、むしろ送り出すくらいだったもんなぁ。
それでその後、キスするような振りして私の反応を見て楽しんでたし。
つくづく私ってヤツに振り回されている。
「今日、来てくれたのって……期待してもいいってことなんですかね?」
すっかり頭が神宮寺くんのことを考えてしまっていたので、隣で話しかけてくる柏木さんの言葉の意味をすぐに理解できなかった。
時間差で「えっ?」と聞き返す。
私の反応を見て、彼が微笑んだ。
「…………なんてね。困らせてすみません」
それ以上の返事は返せなかった。
考えていたよりもずっと柏木さんは私を想っているみたいで、心苦しくなってしまった。
あぁ、もういっそこの人になびくことが出来たならどんなに良かったか!
だけど自分の気持ちはこの間確認してしまって、戻ることは出来なそうだ。