マイノリティーな彼との恋愛法


大きな通りに面した全国チェーンの居酒屋の前で、私はひとりでゆらゆらはためく色褪せた暖簾を眺めていた。


あぁ、気が重い。
約束したから来てはみたものの気が重い。

だって合コンなんて本当に本当に7年ぶりで、仕事以外で男性と話すのなんていつぶりだろう。
数年前に付き合った人はいたけど、釣った魚にエサをやらないタイプの人だったらしくてすぐに別れてしまった。

今思うと、これまで付き合ってきた人はみんなそんな感じの人で、猛アプローチを仕掛けられた末に付き合ったはいいが、結局たいして構ってもらえずに別れるというのがパターン化しているような気がする。


で、結果として恋愛が億劫になっていつの間にか遠ざかってしまった。

いやいや、そりゃあ恋人がいるに越したことはないのだけど。


どうしてもこの人と付き合いたい!この人じゃなきゃイヤ!みたいに思える人に、私はいまだかつて出会ったことがないというだけのこと。


そんな情熱的な恋愛、今さら無理があるか━━━━━。


とにかく今日は人数合わせで呼ばれたんだから、適当にニコニコ笑ってやり過ごせばいいのよね。


行きたくないがために鉛のように重くなりつつある足を奮い立たせて、いざ出陣!とばかりに居酒屋のドアを開けた。


「いらっしゃいませ〜!お客様ご来店!」

「いらっしゃいませ〜!」


アルバイトなんだろうか、若い男女の店員の声が店内を飛び交う。
遅れて来たことを伝え、合コン真っ最中であろう個室へ案内してもらった。


< 13 / 168 >

この作品をシェア

pagetop