マイノリティーな彼との恋愛法


まだまだ恋人たちで溢れ返る街。
イルミネーションがキラキラしていて、クリスマスツリーの電飾もフル稼働中。

そんな街を、道行く人々の隙間を縫うようにしながら走る。


どいつもこいつも幸せそう!
当たり前か、好きな人と一緒にいるんだから。

私なんて自らセレブ婚への道を断ってしまったばかりで、なかなか普段は上がれないところにまで気分が高揚している。

こういう時って、勢いが肝心よね。


恋愛から遠ざかってウン年、それでもタイミングが大事だってことは知っている。
恋愛はタイミングなのだ。
出会った男女がフリーのタイミング、お互いが好きになるタイミング、会いたくなるタイミング……、それは様々なシーンで数え切れないほどある。


私が会いたいのは、今だ!


ちょうどクリスマスラッピングの袋を持っていることだし、
「先日、お酒で迷惑かけちゃったからお詫びがしたいの」
なんて言って、呼び出してしまおう。

状況によっては好きであることを伝えてもいいかもしれない。

なにしろヤツは自分から「好き」だとか「付き合おう」だとか言ったことがないと話していた。
それならば動くのは私しかいない。


この際、変なプライドは捨てる!


走って走って駅の構内に入り込んだ私は、荒くなった呼吸を整えてからスマホを取り出す。

焦っていたせいでバッグにつけていたウミガメのキーホルダーが引っかかって、金具が外れてしまった。
コロコロとキーホルダーが少し濡れている床を転がり、「あっ、ウミガメが!」と独り言を発しつつ必死に拾う。


ウミガメは薄汚れた甲羅を背負って、相変わらずつぶらな瞳でこちらを見ていた。


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