マイノリティーな彼との恋愛法
結局2人で並んで歩くハメになり、横を見てもヤツは先に行く様子など微塵も見せない。一緒に駅まで歩く気のようだ。
ここは腹をくくるしかなさそう。
諦めて大人しく隣を歩いていると、真冬の北風がびゅうっと全身を撫でた。
冬にはみんな口を揃えて唱える「寒い」が自然にこぼれてしまう。
「うっ!さっむーい!」
今夜は風が強い。
少し雪も混じっていて、もしかしたら未明には吹雪になったりして。
隣の彼は、やはりマフラーなどの防寒具は身につけていないので、私以上に寒そうに身を縮めている。
私はフカフカのファーティペットに口元を埋めて、必死に寒さに抵抗した。足元にはうっすら雪も積もり始めていて、明日の朝には路面はツルツルになっていそうだ。
「スカート押さえた方がいいですよ。風で煽られてます」
「え!?」
強風が吹くたびに着ているネイビーのフレアスカートがワサワサ揺れているのは分かっていたけど、神宮寺くんに指摘されるまであまり気にしていなかった。
片手でスカートを押さえて、これなら大丈夫だろうと安心していると、
「24日は、うまくいったんですか?柏木さんとのデート」
と、神宮寺くんに尋ねられた。
ふん、大して気にならないくせに何故聞いてくるのだ!
内心イラッとしたけれど、あまりにつっけんどんな物言いをしても自分が虚しくなるだけなので、気持ちを落ち着かせる。
「24日は滞りなく終わった」
「それは…………おめでとうございます」
「なんでおめでとうなのよ」
「付き合うことになったんですよね?」
「ううん。お断りした」
「は?」
彼にしては珍しくけっこう強めな聞き返しだったので、どんな顔をしているのかと横を見る。
ヤツは目を見開き、眉をひそめ、意味が分からないという言葉が聞こえてきそうな表情で私をじぃっと見つめていた。
「冗談ですよね?」
「どうしてこんな時に冗談言わなきゃいけないのよ」
「だって柏木さんですよ?普通の女性なら十中八九喜んであの人と付き合うと思うんですけど」
「じゃあ普通じゃないのね、私」
自嘲気味に笑いながら、なるほどな、と納得した。
神宮寺くんが普通の人と違うなら、そんな彼に惹かれた私も普通じゃないのか。
ということは、あの電話に出た彼の恋人らしき女の子も普通じゃないってこと?
世の中って不思議。