マイノリティーな彼との恋愛法
それから年末の休みに入るまで、私はひたすら会社の中に閉じこもって仕事をした。
ストレス発散で毎日行っていたランチは行かず、ミーティングルームを拝借してコンビニ弁当を食べる日々。
相変わらず風花ちゃんは私に付き合ってくれていた。
来る日も来る日もミーティングルームでお昼ご飯を食べ、年内最後の出勤日に、ついに風花ちゃんに聞かれた。
「春野さん……、あの〜もしかして、春野さんの好きな人って……じんぐ……」
「なぁ〜にぃ〜?」
最後まで言わせない〜、とメデューサのように鋭い眼光で彼女を睨みつけると、風花ちゃんは一瞬で石に変化した……ように見えた。
「なんでもありませんっ」
縮こまる彼女に、君はノロけてなさい、とにっこり微笑む。
これでいい。
しばらく神宮寺くんと顔を合わせなければ、きっとこの気持ちは少しずつ消えていくはず。
なんであんな男を好きになったのか、今でも不思議なんだけど。
だけど顔を見たらたぶん、まだこの心臓は条件反射でドキドキするだろうし、声を聞いたら嬉しくなりそうなのだ。
だからシャットアウトする。
偶然ビルの中で会ってしまわないように、細心の注意を払う。
ちょっと気をつけるだけで、彼とは一切会わずに済むことが出来るのだ。
それっぽっちの接点しか無かったということだ。
ちっぽけで、脆い接点。