マイノリティーな彼との恋愛法
そうして無事に年末の仕事を終え、お正月は実家でゆっくりと過ごし、散々餡子餅だのずんだ餅だのお雑煮だの、アレがいいコレがいいと母親に甘えた。
こたつでゴロゴロしていたら、
「全くもう!あんたはそうやっていっつもゴロゴロと……。そろそろ結婚相手でも見つけてくれないとねぇ。お母さんもあんたも歳だけは取っていくんだからね」
と文句を言われた。
結婚へのプレッシャーは今に始まったことではないが、このタイミングだとけっこう心にグサッと刺さる。
「わ……分かってるよ」
「いい?今年彼氏が出来ないようなら婚活でも紹介でもなんでもいいから、とにかく少しは努力しなさい。あんたは売れ残りなのよ?余裕こいてる場合じゃないんだからね」
「どうせ売れ残りですよ」
「まあまあ、せっかくひばりが帰ってきたのにケンカしないでさ」
私とお母さんの言い合いに、待ったをかけるのはいつもお父さんの役目。
お母さんお手製のずんだ餅を食べて、お父さんは幸せそうな顔をしていた。
「ひばりだって分かってるさ、自分が売れ残りだってことくらい。なぁ?」
温厚な笑顔から繰り出される地味に傷つくセリフを、お父さんは無意識に吐いてくる。
2人して売れ残り売れ残りって。分かってるってさっき言ったじゃないの!
「そんな靴下を履いてちゃあ、男は寄ってこないわよ。色気ゼロ」
ちょこんとこたつから出た私の足をツンツンとつま先でつついてきたお母さんは、「まあ、可愛いっちゃー可愛いけどねぇ」と笑っていた。
今日の私の靴下は、以前に神宮寺くんにもらったウミガメの靴下だった。
つま先にウミガメの顔が描いてあり、甲の部分には甲羅の模様。とにかく派手なのであまり履いていなかった。
「色気なんて、出す場面ないし……」
ボソッとつぶやいて、ため息をついた。
あの時、どうにか絞り出して色気を出せばよかったのかな。
私がお酒にのまれて歩けなくなり、神宮寺くんにアパートまで送ってもらったあの時に。
でも寄せても寄せても谷間も出来ない私のどこから色気を出せと?
あの時点で彼には恋人がいただろうし、ヤツの性格を考えると色仕掛けなんて通用するまい。