マイノリティーな彼との恋愛法
「神宮寺くんは!?無事なんですか!?」
自分でも驚くくらいの剣幕で、柏木さんに詰め寄ってしまった。
言ってからハッと我に返ったものの、もう遅い。
私の気持ちは、今のできっと全て知られてしまっただろう。
柏木さんは一瞬困惑したような表情になったけれど、すぐにポンと私の肩に手を置いて安心させるように撫でてくれた。
「大丈夫だよ。みんな生きてると連絡が入った。だけどかなりの急斜面と視界不良のせいで動けないみたいで。救助を待ってる状態らしい」
なんなの、それ!
どんだけ危険な場所で測量してるわけ?
『山奥とか、足場の悪い田舎の崩れかけた崖とか、整備されてない所だと最悪です』
そういえば、神宮寺くんはそう話していたんだった。今さら思い出した。
「今はとりあえず、救助隊に助けてもらったあと病院に直行する手筈を整えたところなんだけど……。俺と一緒に、春野さんも来ますか?」
柏木さんの申し出は、とても意外なものだった。
まさか私まで連れていこうとしてくれるなんて、予想外だった。
そこまで甘えていいものか迷ってしまう。
答えあぐねていると、後ろから風花ちゃんが私の背中を強めに押した。
「柏木さん、お願いします!春野さんを病院に連れていってください!!」
「よし、分かった。じゃあ少しここで待ちましょう。救助隊から連絡が来たら移動しますから」
ニコッと笑った柏木さんに微笑み返した私は、後ろの風花ちゃんを振り返る。
彼女は親指を立ててウィンクしていた。
「顔みた方が安心するじゃないですか!」
うん、と答えて喉が詰まる。
ヤバい、風花ちゃんがこんなにいい子だなんて。
感動で涙が出そう。
そして、とにかく祈った。
神宮寺くんが元気でありますように、と。