マイノリティーな彼との恋愛法
9 マイノリティーな彼と、ずっと一緒に。


『酔いどれ都』で渚と飲んでいた私は、これまでの経緯を彼女に話して相談した。
平日の夜に呼び出すことなんて滅多にないので、何事かと彼女もすぐさま来てくれたのだ。

渚はふむふむと黙ってビールを飲みながら話を聞き、いつもならちょこちょこ茶々を入れてくるはずなのにそれもせずにひたすらうなずいていた。


「…………まあ、話はだいたい分かった」


渚は眉間にシワを寄せて、私の話が終わると共にビールのジョッキをコトンとテーブルに置く。
そして、顎のあたりに手を当てて考える仕草をして唸っていた。


「傍から聞いてると両想いに思えるのは気のせい?」

「気のせい……なのかな。よく分かんないよ。だってさ、神宮寺くんには彼女がいるんだよ?それなのにおかしくない?」

「そもそもその女は本当に彼女なの?本人にきちんと確認した?」

「した……ようなしてないような」


どうだったっけ。自信ない。


「お姉ちゃんか妹あたりなんじゃないの」

「そんなベタな展開アリ?」

「可能性は無きにしもあらずでしょーが」


バカねぇ、と渚は続け、ついでにわざとらしくため息までついてきた。呆れたような目を私に向け、「気になることは聞かないと始まらないのよ」と人差し指を突きつけられた。

彼女が言っていることはもっともであり、確かに私はきちんと彼に確認していないことを思い出した。
だってあの状況ならば恋人だと思うのが自然だと思うのだ。


「好きだって言ってないんでしょ、ひばり」


悶々と考え込む私に、渚がハッキリと面と向かって告げた。


「もうこの際、玉砕覚悟で好きだって言いなさい。ここまで来たらあんたの気持ちは神宮寺くんにバレてるんだから、こっぴどい振り方しないでしょ」

「振られる前提で言わないでよっ」

「保証は出来ないって意味で言ってるだけよ」


神宮寺くんと最後に会話を交わしてから、もうすぐ1週間。
あれからビル内で彼を見かけることもなく、連絡が来ることもなく。

どうしたものかと頭を悩ませていたのだ。


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