マイノリティーな彼との恋愛法
後日談を、ちょこっとだけ。


「ねぇ、渉くん」

「はい、なんでしょう」

「これはいったい……どういうことなの?」

「はい?」


私の実家に結婚の挨拶を済ませ、「どーぞどーぞご自由にお持ち下さい返品は不可ですけど!」と、両親に送り出されたのが昨日。

今日は渉くんの岩手にある実家にご挨拶を……と思って彼についていったら。


とんでもないところに連れてこられた。


「言ってませんでした?」


ケロッと聞き返されて、私は「聞いてない!」と悲鳴にも似た声を上げた。


「渉くんのご両親、普通の会社員だって言ってたじゃない!」

「普通の会社員ですよ。……あれ、役員だったかな。いや社長だな」

「はあ!?」


しゃ、社長だと!?

ぐるんっと顔の角度を上に向けて、そびえ立つようなセキュリティー万全の立派な門構えに怖気づく。

普通じゃない。絶対に普通じゃない。
超金持ちだと大声で主張しても自慢にならないほどの巨大な門。向こう側にはきっと広大な庭が広がっていて、「お屋敷」という言葉がピッタリ当てはまる家が建ってるに決まってる!


「な、な、何者なの、渉くんって!?」


恐れおののいた私の視線をふらりと交わした渉くんは、肩をすくめてニヤリと笑った。悪巧みがバレた子どもみたいに。


「親は神宮寺リゾートの4代目の経営者です。俺は5人兄弟の末っ子で、跡継ぎでもなんでもありませんから期待しないで下さい。でも遺産はしっかり相続するので、将来は安泰です」

「━━━━━お、お、お……」

「大丈夫ですか、ひばりさん」

「御曹司だったのーーーーー!?」


私の叫びは、きっと宇宙の果てまで届いたんじゃないだろうか。
衝撃が強すぎて腰が抜ける思いだった。


神宮寺渉に、私は一生振り回される。
そんな予感がした。










おしまい。

< 167 / 168 >

この作品をシェア

pagetop