マイノリティーな彼との恋愛法
後日談を、ちょこっとだけ。
「ねぇ、渉くん」
「はい、なんでしょう」
「これはいったい……どういうことなの?」
「はい?」
私の実家に結婚の挨拶を済ませ、「どーぞどーぞご自由にお持ち下さい返品は不可ですけど!」と、両親に送り出されたのが昨日。
今日は渉くんの岩手にある実家にご挨拶を……と思って彼についていったら。
とんでもないところに連れてこられた。
「言ってませんでした?」
ケロッと聞き返されて、私は「聞いてない!」と悲鳴にも似た声を上げた。
「渉くんのご両親、普通の会社員だって言ってたじゃない!」
「普通の会社員ですよ。……あれ、役員だったかな。いや社長だな」
「はあ!?」
しゃ、社長だと!?
ぐるんっと顔の角度を上に向けて、そびえ立つようなセキュリティー万全の立派な門構えに怖気づく。
普通じゃない。絶対に普通じゃない。
超金持ちだと大声で主張しても自慢にならないほどの巨大な門。向こう側にはきっと広大な庭が広がっていて、「お屋敷」という言葉がピッタリ当てはまる家が建ってるに決まってる!
「な、な、何者なの、渉くんって!?」
恐れおののいた私の視線をふらりと交わした渉くんは、肩をすくめてニヤリと笑った。悪巧みがバレた子どもみたいに。
「親は神宮寺リゾートの4代目の経営者です。俺は5人兄弟の末っ子で、跡継ぎでもなんでもありませんから期待しないで下さい。でも遺産はしっかり相続するので、将来は安泰です」
「━━━━━お、お、お……」
「大丈夫ですか、ひばりさん」
「御曹司だったのーーーーー!?」
私の叫びは、きっと宇宙の果てまで届いたんじゃないだろうか。
衝撃が強すぎて腰が抜ける思いだった。
神宮寺渉に、私は一生振り回される。
そんな予感がした。
おしまい。