マイノリティーな彼との恋愛法


それ以上会話が弾むこともなく、私と彼だけが取り残されたみたいに、いやむしろお葬式のように、離れ小島のように沈黙が続く。
気まずいとかそういうのを通り越して、ただひたすらに帰りたいと願うばかり。


あぁ、もういち早く帰って海外ドラマの続きが見たい。
キャシーとセリーヌがサムを取り合ってるあの三角関係の状況も気になるし、レーナが職場の上司と不倫に走ったのも気になってる。
それからそれから、キャシーの幼なじみのジョニーはいつになったら彼女に想いを伝えるのかとかも焦れったくて応援したくなるし━━━━━。


「このあと二次会絶対行きましょー!」


どこからかそんな声が聞こえてきた。
赤ら顔の風花ちゃんが、クネクネしながらおねだりするように隣の男性にしなだれかかっている。

げ、二次会とか地獄。
即刻帰らせていただきま……。

「春野さんも途中参加なんですから、二次会行きましょうよ〜!ね?」

と、空気の読めないバカ女・風花によって私の思考は停止する。
ぼっち確定の二次会にどうやって参加しろと!?


「俺、今日は絶対風花ちゃんのことお持ち帰りする〜!」

「えー、もうヤダ〜。そういうこと言うの禁止ぃ〜」


さっきから盛り上がっている隣の男性とギリギリアウトの会話を繰り広げる彼女に、もう物申す気もない。
つい今しがた「建築士じゃなかったら意味ないですよね〜」とかなんとか言ってたじゃないの!

相手がややイケメンだからか?

若いからという理由では片付けられなさそうな、これは個人の恋愛観の問題になってくるので口は出さないけど。


「いいんですか、止めなくて。同僚がお持ち帰りされそうですよ」


唐突に神宮寺くんに声をかけられて、しかも内容が内容なのに彼は小声にすることもなく普通に尋ねてきた。


「彼女が話してる相手。あいつ、かなり手が早いですけど」

「……ま、いいんじゃないですか?もう大人だし」


だってそうでしょ?
もう立派に成人して就職してるし、学生とはわけが違う。
会社でも散々お世話してるのだから、そっちのことまでお世話したくないというのが本音だ。

若気の至りってやつを、止める気など起きない。


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