マイノリティーな彼との恋愛法
「でもさぁ、もう日にちもあんまり無いよ?5人ずつって相手方にも話しちゃってるし、春野さんならまぁ、見た目は綺麗だし連れてったって向こうも嫌な気はしないじゃない?」
「そりゃそうだけど。ただ春野さん連れてくと自己紹介で年齢言った時点で引かれない?」
「いいんじゃないの?引かれるのは春野さんだし。うちらは恥ずかしい歳じゃないんだし。どうせあの人って所詮売れ残りじゃん?」
「それは言えてるわ。春野さんもれっきとしたアラサーなんだからTPOはわきまえてるだろうし、しらけるような発言はしないはず。人数合わせって最初から本人にも言っておけば大丈夫でしょ」
キャハハと隣のミーティングルームから響いてくる無邪気なゆとり世代の会話。
合間にプラスチック同士がぶつかり合う、女性特有の化粧直しの音。ポーチをまさぐる彼女たちの姿が容易に目に浮かぶ。
━━━━━おーい。
その『春野さん』が、ここにいますよー。
ミーティングルームなんてかっこいい呼び方をしてはいるけど、実際はちょっとしたスペースをテーパードで仕切っているだけ。
なので基本的に会話は丸聞こえの上、本当にミーティングしたい人にとって彼女たちの存在って邪魔なんじゃなかろーか。
「げほっ、げほっ」
私の目の前に座る仁科課長がわざとらしく咳払いをするも、隣のミーティングルームで会話を弾ませている彼女たちには一切聞こえていない。
「…………大変だね、君も」
それはそれは気の毒そうな目つきで同情してきた課長に、「はぁ」とため息なのか返事なのかよく分からない声を漏らした。