マイノリティーな彼との恋愛法
なんとか合コンという名の地獄にも似た1時間が経過し、ようやく狭苦しい個室から解放された。
外に出ると秋の澄んだ夜の空気が体を包んで、ぐっと背伸びしたい気分。
「じゃ、二次会行きますか!」
風花ちゃんと絡んでいた男が、しっかり彼女の腕をガッチリ掴んで明後日の方を指さしている。
もうこれは逃すまいのサインだ。
一応念のため、と風花ちゃんに
「大丈夫?何かあったら逃げるのよ」
と耳打ちしてみると、意外にも彼女はしっかりとした口調で
「二次会で見定めてみます」
とにっこり微笑んでいた。
「…………結局、心配してたんだね」
ぼそりと背後から声がして振り向くと、神宮寺くんがぼうっとした佇まいでこちらを見下ろしていた。
「そりゃ、これでも先輩なので。後輩が過ちを犯さないように、釘は刺さないとと思って」
「ふうん」
感情の読み取れない彼の顔を見上げていたら「おい、神宮寺」と風花ちゃんを拘束している彼が呼びかけてきた。
「お前は二次会どうする?他の女の子と全然しゃべってなかったじゃん。二次会行くだろ?」
置き換えると、『そんな賞味期限ギリのアラサーとしか話せなくて可哀相だから、二次会で若い子捕まえておけよ』みたいに聞こえた。
我ながら卑屈になったアラサーの耳って本当に怖い。
続きが気になっていた海外ドラマを、帰ったらようやく見れるという希望に満ち溢れていた私は、ちょっとした冷たい水をさされたようで落ち込んだ。
すると、ポンとどこからか肩に手を回されて思わずまごついた。
状況を飲み込めないながらも、どうやらその手の犯人が神宮寺くんであるということだけは分かった。
…なっ、なに、この手!!
戸惑ってアワアワしていると、上から神宮寺くんの声が降ってきた。
「悪いけど二次会は行かない。俺は春野さんを持ち帰るんで」
その場にいた全員が目を丸くした。
もちろん、私も。
「━━━━━はあ!?」