マイノリティーな彼との恋愛法
「まぁ、でもあなたのおかげで恥かかずに済みました。なんだかすみません。……あ、そうだ。メガネのお金、払わせてもらえないかな?」
色々と衝撃を受けているのか、神宮寺くんから返事が返ってこない。
よっぽど目が見えなくて、私のことを美化してたのかな。そうだとしたら全力で謝りたいくらいだ。
「連絡先交換すると変に怯えさせそうなので、もしよかったら九階の不動産会社の管理センターにいるから連絡ください。いつでもお支払いできるように、お財布にお金入れておくので」
それでも、まだ返事がない。
驚いたような表情はまだ残っているものの、今は少し冷静に話を聞いているようだ。
ただし、なにも発言しない。
仕方ないので、「じゃあ」と軽く会釈して帰ろうとしたらまたしてもつまずきそうになって彼に体を支えてもらった。
くそぅ、こいつがさっさと歩くからアルコールが足に来ちゃったじゃないか。
「タクシー、拾いますか?」
と尋ねられたので、なるほど酔っ払い判定をされたらしい。
間違ってはいないけど。
「いい。大丈夫。自分で出来ます」
素っ気ない上に可愛げのない返しをした。
これがしばらく彼氏ができない所以なのかもしれない、とこの時気がついたけど。
もう今さらこの歳で甘えるとかリアルにキツいということも承知していた。
そうして彼を残し、私はタクシーを拾ってアパートへと帰ったのだった。