マイノリティーな彼との恋愛法
2 マイノリティーな彼との食事。
「おはようございますっ!春野さん、どうでしたか?金曜日の、よ・る・は?」
合コン番長(もう番長の称号をくれてやる)の風花ちゃんが、月曜日の朝に元気よく声をかけてきた。
果たして彼女はあの合コンの男とホテルに行ったんだろうか。
どうでもいいから聞き出さないけど。
始業前の仕事として、センター内の電話の受話器を消毒液で磨く作業をこなしながら、番長には目もくれずに「別に」と答える。
「どうもこうも、タクシーで帰ったけど」
「え〜、またまたぁ。神宮寺さんって春野さんより年下ですよね?どうだったんですか、久しぶりの夜は?」
「ちょ、ちょっと!久しぶりとか決めつけないでよね!」
「え?違うんですか?」
ち、ち、違わないけどさ。
という、悲しいつぶやきはどうにかこうにか喉の奥で噛み潰し、嘘をついていると思い込んでいる様子の風花ちゃんへ首を振って見せた。
「どうやら彼はさっさと帰りたかったみたいなの。それで、適当に嘘を思いついて私が合わせただけ」
実際、1ミリも合わせられなかったんだけど。それはここでは敢えて言わないことにしよう。
「そんなことより。残念だったね、建築士との合コンじゃなくて。騙されてたことはちゃんと怒ったの?」
「怒りましたよ!話が違う〜って。まさか測量設計事務所だとは……。しかも実際に測量士なのって、春野さんをお持ち帰りした神宮寺さんだけだったじゃないですか」
「お持ち帰りされてないんですけど」
私が突っ込んでいるというのに、風花ちゃんはちっともこちらの話など聞いていない。
右から左へ受け流し、はぁ〜とため息をついた。
「なんとか頼んで、設計事務所繋がりで今度こそ建築士と合コン出来ないかな〜」
「なんで建築士がいいの?」
「一級建築士のお給料がどれだけいいか知らないんですか?」
「さぁ……」
「お医者様とか弁護士とか国家公務員ならもっといいんですけど。あいにく繋がりもないし。あっ、イケメンだとなおいいです」
要するに、風花ちゃんはお給料がいいイケメンと付き合いたいわけだ。
イケメンと付き合ってみたいというのは分からなくもないけど。