マイノリティーな彼との恋愛法
ふと正面を見ると、渚がわざとらしく耳に手を当てて電話の会話を聞こうとしている。
「誰?誰??」と早速詮索を始めていた。
『……誰かと会ってますよね?』
周りの話し声も賑やかだし、渚の声も聞こえたのか神宮寺くんは冷静に尋ねてきた。
こちらに移動してきた渚が、反対側から私のスマホに耳を押し当ててハッとしたような表情を見せた。
「えっ!?男じゃん!!」
「渚、ちょっと黙っててよっ」
「なによ、ちゃっかりいるんじゃん!ちゃんと隠さずに話しなさいよ〜!」
「はぁ!?何言ってんのよ!そういうのじゃないってば」
「どこで出会ったの!?あっ、まさか社内恋愛!?」
「渚っ」
私たちの会話を、しっかり電話越しに聞いていたらしい神宮寺くんの呆れたようなつぶやきが耳に入る。
『あのー。電話切りますよ』
「ご、ごめん。あ!!」
謝る私の手から、渚が勝手にスマホを奪い取る。
そしてあろうことか神宮寺くんと会話を始めてしまった!
立ち上がって腕組みをして、ニヤニヤと私を見下ろしている。
「騒がしくてごめんねー。ひばりの友達の渚ですぅ。大丈夫、今から向かわせるから〜!今どこにいるの?……あら、ここから近いじゃない。すぐ行くからそこで待ってて!……え?いいのいいの!親友の恋を応援したいだけだからぁ〜!」
「こ、こら!渚!勝手に何言って……」
恋とか言いやがって〜!!
彼に誤解を与えるようなことを言うんじゃない!!
急いでスマホを奪い返したけれど、画面はもうすでに通話が終わって切れてしまっていた。
「もー!勝手なことしないでよ!この人は単なる知り合いみたいな感じで……」
「ひばり。今すぐに東口の電気屋の入口に行きなさい。彼がいるはずだから」
「ちょっとーーー。話進めないでよーーー」
「気にしないで。ここの飲み代は払っておく。残りの食事はしっかり食べておくから。ほらっ、急いで!」
バシバシお尻を叩かれ無理やり席を立たされた私は、これもこれもと渚にバッグやアウターを渡され、放り出されるようにしてお店をあとにした。
もうこうなったら行くしかない。
半ばヤケクソで歩き出した。