マイノリティーな彼との恋愛法
「な、何か食べ方に問題でも?」
「いえ。なんでも美味しそうに食べる人だなぁと思って」
やけに感心したように言うので、私は「当然でしょ」と無駄に胸を張った。
「今の私には食べることくらいしか楽しみがないもの。週末に飲みに行ったり、お昼休みにランチしたりね」
「へぇ。嫌いな食べ物はありますか?」
「ホヤとゴーヤくらいかな」
「あー俺も苦手だ、それ」
思っていたよりも会話は弾んだ。
彼は決して話し上手ではない。だけど、嫌々私に付き合ってくれてるというわけではなさそうだ。
ただし恋愛うんぬんのそれとは違って、面白い女と認定されているような空気をヒシヒシと感じたけれど。
「食べることしか楽しみがないって、仕事は楽しくないんですか?」
ヤツは案外鋭くて、私の今一番の悩みどころをつついてくる。
それが無意識に繰り出したものなのかは不明である。
「え?神宮寺くんは仕事楽しい〜って思いながら仕事してるの?」
そりゃ私だって「仕事めんどくさーい」とか「早く帰りたーい」とか、後輩たちのグダグダな文句を聞いていると影響されそうになることはあるけど。
仕事は好きだけど、楽しくてたまらない!なんて思ったことは無かったな。
彼は私の問いかけに対し、普通になんてことないことを話すように答えた。
「俺は仕事がストレス発散みたいなものなので」
「━━━━━えっ!?嘘!?」
「嘘なんてつきませんよ」
「そんなの仕事人間の言うことじゃん!!」
これまでの人生で「仕事がストレス発散」って言う人に人に会ったことない!
目をまん丸にして驚きを隠せなかった。