マイノリティーな彼との恋愛法
「じゃあ聞きますけど、売れ残りの春野さんはどうして売れ残ってるんですか?もしかして結婚願望ないとか?」
「いちいちトゲのある言い方しないでよねっ。結婚願望はあるよ。願望が強すぎて結婚した友達を一瞬妬みそうになるくらいね」
「怖っ」
私を怒らせたいのか困らせたいのか分からないが、神宮寺くんは怯えたように両腕で体を抱えるようにしておそるおそるこちらを見ていた。
でかいくせして、なにその小動物みたいな動き。
癪に障るわー。
「出会いもないし、いい人も現れないし、身動きがとれない状態っていうか。合コンに行っても必死って思われそうだし、なんか気が進まない」
取り分けた豚の角煮を頬張って、とろとろの食感を楽しむ。
それでもしゃべるのはやめない。
残り少ないビールを飲み干した。
「理想が高いんじゃないですか」
「それね。後輩にも言われたし渚にも言われたよ」
彼もビールを飲み終わりそうなので、2人でメニューに視線を落とす。
「やっぱり無理があるかなー。スーツが似合って年上で、無精髭がやけに似合う隠れマッチョな人」
「はぁ?それが理想の人ですか?」
「まだあるよ。タバコ吸う姿が渋くて声がセクシーで、拳銃構えるとさらにかっこよくなる人」
「………………誰ですか、それ」
「私の好きな俳優さん」
平然と答えた私を、神宮寺くんがそれはそれは可哀想な人でも見るかのような目つきで哀れんだのを感じた。
だって理想でしょ?と口を尖らせたら、彼は深々とため息をついた。
「そりゃあ結婚できないわけだ」
「理想と現実が違うってのは分かってるよ。あくまで理想だもの。そっちは?結婚願望は?」
「ないですね」
彼は迷うことなく、キッパリと言い切った。