マイノリティーな彼との恋愛法
「正直、恋愛するのが面倒くさい。色々考えるのが面倒くさい。毎日連絡を取り合うのが面倒くさい。測量してデータをパソコンに打ち込む方が何倍もいい」
「ひどい言い草〜!」
「仕方ない。事実だから」
淡々とありえない主張を続ける究極の面倒くさがり屋に、心から引いた。
恋愛に対して、あまりにも面倒くさがりすぎでしょ!
こいつ、恋愛をなんだと思ってるんだ?
「あのさぁ、恋愛ってそういうことじゃないでしょ?本当に好きだったら相手が喜ぶこととか考えるし、毎日会いたいって思うでしょーが」
メニューそっちのけでヤツに臨戦態勢で吹っかける。
私が牙をむいたことに気づいたのか彼は少しだけ目を細めて、文字通り面倒くさそうな表情になった。
「ふーん。じゃあ俺は、たぶん今まで付き合った人は本気で好きじゃなかったのかも。毎日会いたいとか思ったことないです。みんなそんなおめでたいこと考えて恋愛してるんですか?」
彼はいとも簡単にスルーした。
なんか、このまま話していくと平行線を辿ってブチ切れそう。
いや、もうキレてるかも?
「さっきの撤回。あなたはモテない男だわ」
「別にいいです、それで」
「そうやって面倒くさい面倒くさい言ってるといつの間にかジジィになって、最終的には孤独死だからねっ」
「別にいいです、それで」
「最後に泣いて死ぬんだからねっ」
「だから別にいいです、それで」
なんて奴っ!!
メガネの弁償なんて言わなきゃよかった!!
そのフレームを真っ二つに折ってやりたい衝動に駆られたけど、どうにか我慢した。
足元に置いていたバッグを引っ掴み、中からお財布を取り出して1万円を彼に押しつけた。
私の剣幕が凄いからか、心なしかびっくり眼で受け取られた。
しかしそんなのは一切気にならない。
「飲む気失せた。帰る。一生土地の測量やってれば!」
言ってから、しまった言い過ぎた!と思ったけれど。
神宮寺くんは特にこたえた様子もなく、ただぼんやりと私を眺めていた。
とんでもない暴言を吐いてしまった私は、女将さんへの挨拶もそこそこにお店を飛び出した。