マイノリティーな彼との恋愛法
3 マイノリティーな彼の提案。
あの食事以来、神宮寺くんとは会っていない。
というか、見かけてもいない。
彼の話によれば、屋外(辺ぴなところの時もあるらしい)に測量しに行ったら、あとはずっとこもってデスクワークだと言っていた。
そう考えると、同じビル内にオフィスを構えているとしても会う確率なんて元々とても低いのだ。
正直ホッとしていた。
だって、話が合わないんだもの。
もしかしたら案外気が合ったりして?なんていう淡い希望も抱いたけれど、それは単なる早とちりだった。
特に恋愛観においては、考え方が違いすぎて話にならない。
連絡先は知ってるものの、私も彼もお互いに連絡するということは無かった。
合コンから1ヶ月が経とうとしたある日、隣のデスクで「ふぅ〜」という悩ましげなため息が聞こえてきた。
チラリと視線を送ると、風花ちゃんが折りたたみ式の鏡を眺めて頬杖をついている。
傍から見たらナルシストっぽい光景だけど、きっとそうではないのだろう。
今週末に数百棟の家賃入金確認とオーナーへの送金をしなければならないので私語をしている暇はないのだけれど、あまりにも何度も「ふぅ〜」と繰り返されるのでいい加減気になってきた。
パソコンの画面を向いたままで、
「風花ちゃん、悩み事?」
と聞いてみた。
「はい〜。恋わずらいです〜」
呑気な返事に、本気でズッコケそうになった。
なんて平和なの、彼女は。
「恋わずらいもいいけど、仕事しようねー」
「でも何も手につかないんですっ。四六時中彼のことばかり考えちゃうんですっ」
私の忠告なんてなんのその、彼女は社会人にあるまじき発言を平気で口にして、またまた「ふぅ〜」とため息をついている。