マイノリティーな彼との恋愛法
ま、いいや。ほっとこう。
いつもそうしてきたように、後輩の恋愛話には首を突っ込むまいとしてそれ以上掘り下げる気はなかったのだけれど。
なぜか風花ちゃんの方が食いついてきた。
「あっ、そうだ。もしかしたら春野さんの方が彼の気持ちが理解出来るのかも!」
「………………は?」
「だって歳が近いんですもん!」
今回の恋愛は彼女よりも年上ってわけだ。
だけど、あくまでもここは職場です。
それだけは忘れずに。
「話ならお昼休みに聞いてあげるから、とりあえず仕事しようか〜」
「はぁ〜い」
甘ったるい舌っ足らずな口調は彼女の十八番(実際舌が長くて不可抗力なのかもしれないけど)なので、「手を動かそうねー」と棒読みでもう一度忠告しておいた。
前はもっとガミガミ注意していたけれど、それでは逆効果であることは学習済みなので口調は優しく。
急にカタカタとキーボードを鳴らし始めた風花ちゃんに安心していたものの、途中から鼻歌を歌い出したのでまさかと思って隣のパソコンの画面を見ると、インターネットで近辺のランチが美味しいお店を検索していた。
「風花ちゃん!」
「あっ、すみませ〜ん!ランチとか久々なんで、ついつい……」
「ついついじゃないでしょ!仕事しなさいっ」
うっかり出現したガミガミ先輩に、風花ちゃんを取り巻く他の後輩がクスクス笑っていた。
日常茶飯事といえばそうなので、みんな慣れたものだ。
彼女の思惑を見越して、私は先手を打っておいた。
「オシャレなカフェなんて行かないからね。オーダーしてから運ばれてくるまで時間かかるから。行くのは定食屋よ」
「えーーーっ」
「つへこべ言わない!仕事仕事!」
まだ不満げな表情を浮かべたままだったけど、風花ちゃんはようやく仕事を再開したのだった。