マイノリティーな彼との恋愛法
春野ひばり、29歳。
来年の春には三十路になる、正真正銘のアラサー女子というやつです。
三十路前はもう女子って言わないのかもしれないけど、このご時世なんでも女子やら男子やら呼んでるから、許容範囲かと。
入社して7年、一緒に頑張ろうねって最初の頃仲良くしていた同期の2人は見事にすでに寿退社。
パソコン業務に慣れさせるためとはいえ、管理センターの事務は若い女子社員がやたらと多い。
平社員だと私が一番上。
だから自ずと後輩に教える機会も多くなり、注意する機会も同時に増え、優しく説明してるのに何故か泣かれるという悲しい立場。
ここ最近はそれがハッキリとしたストレスだと感じるようになってきて、発散方法と言えば美味しいものを飲んだり食べたりすることくらいしか思いつかず。
夏に管理センターの移転があって、市の中心地からは少し距離があった会社が市街地の新しいビルにお引っ越し。
よって、オフィスは綺麗になるわパソコン機器も一新されるわ、さらにはお昼休みに美味しいランチに行けるわで、どうにかストレスを溜め込まずに済んでいた。
このお昼休みのランチだけが私の心のオアシスになりつつある。
今日のランチは中華料理屋で天津飯を食べていた。
レンゲですくった熱々の天津飯を口に運べば、とろりとしたあんかけが玉子とご飯に絶妙にマッチして、しつこくないごま油の香りが鼻に抜けた。
んー、美味しいっ。
至福の時間。
これで午後も頑張ろう。
会社に戻ったら、きっと後輩たちがどうせよく分かんない輩しか集まらないような腐った合コンに私を誘ってくるんだ。
ニコニコと可愛らしい笑顔を貼り付けて、「春野さんも合コン来ませんか〜?人数合わせですけど」とか言いながら。
心の奥底では「ま、所詮アラサーでしょ」って思ってるんでしょーよ!
目に浮かぶわっ!
カツッとレンゲがお皿にぶつかって、慌てて割れていないか確認する。
ほっとして、そしてため息。
悪かったな、アラサーで。負け組で。
私だって出来ることなら30になる前に寿退社したかったよ。
でも仕方ないじゃない!
相手がいないんだもの!!
十中八九諦めている結婚という二文字を頭から追い払い、仕事にかまけていたここ数年の思い出に浸ってしまった。