マイノリティーな彼との恋愛法
ものの5分ほどで迅速にアジフライ定食が運ばれてきて、そのスピードに毎度のことながら感服する。
早ーい!と感動している風花ちゃんに割り箸を渡して「食べよ」と笑いかけた。
「いただきまーす」
私たちは手を合わせて、サクサクのアジフライを早速口に運んだ。
「えっ、嘘。めちゃくちゃ美味しーい!」
「ほらね?そのへんのカフェに行くより早いし美味しいし最高でしょ?」
「はいっ」
嬉しそうに笑う風花ちゃんを見て、ちょっと意外な気がした。
この子って、もしかしてものすごく素直なだけなのかも。オブラートに包んで話が出来ないだけで、根本の性格は悪くない?
仕事に対する態度はどうかと思うことは多々あるけれど。
「で、本題は?そのカレとやらはどんな人なの?」
お昼休みは時間も限られているし、さっさと聞いておこうと話を切り出す。
すると彼女は、待ってましたとばかりに話し出した。
「32歳独身、イケメンで高身長、とっても面白い人です」
「へぇ〜、どこで出会ったの?」
「この間の測量士合コンです。……って測量士は1人しかいませんでしたけどね」
「え!?そんな人いた!?」
まさかの展開。
相手は風花ちゃんがずっと話していた、あのチャラそうな人?
私の心の声はどうやら口に出ていたらしい。
彼女は違いますよ、と首を振った。
「あの人とは二次会で少し距離を置いたんです、見るからに軽そうだったので。それで違う人と話しているうちに連絡先聞かれて、交換したんです」
「全然気づかなかったなぁ、イケメンいたっけ?」
「いましたよ!………あ、でも春野さんは神宮寺さんに夢中でしたもんね〜」
「全っ然!!」
「照れない照れない」
「照れてないし。私のことより風花ちゃんでしょ?意外に冷静に男を見てるのね〜。平気で男と寝ちゃうのかと思ってたわ」
「なんて失礼な〜!」
だって風花ちゃんがオブラートに包まないから、私も自然と気にしなくなってしまった。
もしかしたらその彼は、彼女にとってはイケメンでも私にとってはイケメンじゃなかったのかも?
人の好みってそれぞれだし。
そもそもあの合コンは若い男しかいないと思い込んでいたから、30代の人も紛れ込んでいたなんて気づきもしなかった。