マイノリティーな彼との恋愛法
「まあ、そんなわけで彼に誘われてちょこちょこ食事に行ったりしてるうちに、いつの間にか好きになっちゃったんです」
「いい雰囲気じゃない」
「彼、測量士でもなんでもない、ただの事務員なんですよ。そんな地味なの嫌って思ってたのに。弁護士とか医者がよかったのに!好きになるとどうでもよくなっちゃうんですね〜……」
うっとりとどこか遠くの方へ思いを馳せている風花ちゃんは、完全に恋する乙女だ。
あんなにハンターのようにのお給料のいいイケメンとの恋愛を夢を見ていた彼女はどこへ行ったのやら。
でも思っていたよりも親近感の湧く性格の持ち主だということが分かっただけでも収穫だ。
「ただ、なかなか付き合おうって言ってくれないんですよね」
やっと現実世界の定食屋へと戻ってきた風花ちゃんは、「ふぅ〜」と例のため息をついた。
なるほど、悩み事というのはこのことか。
「風花ちゃんが言えばいいんじゃないの?」
「万が一振られたりしたら立ち直れませんもん……」
「しょっちゅう食事に行ってるのに振られるってことあるの?間違いなく脈アリじゃない」
「春野さん!30過ぎの男の人って何考えてるんですか!?」
付け合せのキャベツの千切りに大量のマヨネーズをかけながら、風花ちゃんが潤んだ瞳で私を見つめてきた。
子犬さながらのうるうるした目は、男だったら放っておかないかも。
「……単にあっちも若い女の子と付き合ったことなくて、自信なくて言えないだけなんじゃないのかなぁ」
下手なことは言えないので、確信を持っては答えられない。
しかしこればっかりは歳が近いからといってそうだと言い切れないのが難しいところ。
だから恋愛って大変なのだ。
単純なようで複雑で、こんがらがる。
それが楽しいところでもあるのだけれど。