マイノリティーな彼との恋愛法


「それに、私なんて相談役を任せられるほど恋愛経験豊富でもないのよね。しばらく彼氏もいないし……」


キュウリの漬物をポリポリかじりながら正直なところを話すと、失礼なことに風花ちゃんは驚くでもなくこれといったリアクションはせずに

「ですよねぇ〜」

と、心なしか同情の眼差しを送ってきた。


「そこは否定してくれてもよくない?」

「だって顔から滲み出てますよ、恋愛下手だって」

「うそっ、ほんと?」


急いで顔をまさぐっていたら、ブッと吹き出された。


「春野さん、男の影無さすぎなんですもん。こういうオヤジくさいお店、平気で来ちゃうし。……でも良かったですね、神宮寺さんと出会えて。これからの人生もっと輝きますよ!」

「だからね、彼はそういうことじゃなくて〜」
以下省略。


どうしてこの子は私の話を最後まで聞かないのか、どうにも誤解が解けない。
何を言っても、もうすでに私と神宮寺くんはくっついてしまったと思い込んでいるらしい。

ヤツの恋愛に対する面倒くさがりな一面を教えてあげたかったけど、そんなもの話したって風花ちゃんには興味など無いだろう。

今は彼女は彼女で自分の恋愛で悩んで、楽しんでいるのだから。


やたらとキラキラして、そしてどことなく可愛くなったような気がする風花ちゃんを見ていると、とても眩しい。
恋をすると、女はみんなこうなるんだっけ。



私は恋を、いったい何年していないんだろう?



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