マイノリティーな彼との恋愛法
「次は牛タン食べに行く約束してるのよ」
「うわー、もう次の話まで?積極的ね〜」
何を思い違いしているのか、ニヤニヤとこらえ切れない笑いを隠しもせずにだだ漏れさせる渚を、きつく横目で睨みつけた。
「もうかれこれ2週間くらい会ってないし。そんなしょっちゅう会うほどの親密度じゃないって」
「ひばり、他に好きな人とかいないんでしょ?」
「え?………………いないけど」
いたら男と食事なんか行くか!
恋人とのデートにアフターファイブを費やすわ!
……という悲しき叫びは言わずに、そこは素直に認めた。
「じゃあ、いいじゃない。測量士の彼。次のデートでちょっとキスでもしてみたら?一気に盛り上がるかもしれないわよ?」
とんでもない渚の発言に、飲んでいたマスカットティーを吹き出した。
同時に周りのお客さんにも注目されて、いそいそとテーブルに飛び散ったそれをおしぼりで拭き取る。
「バカ言わないでよっ。どこをどうしたらキスに発展すんのよ!いったい何年してないと思ってんの!」
「………………え、むしろ反論するところが違くない?」
慌てふためく私に、渚は冷静に突っ込んでくれた。
「とにかくさ、可能性があるなら範囲を広げてみてもいいんじゃないかと思うの。たとえそれがひばりのストライクど真ん中じゃなくても。ギリギリストライクだって、試してみる価値があると思わない?」