マイノリティーな彼との恋愛法
受け取るのを迷ったのか、しばらく動きを止めた彼は、結局私のハンカチを受け取って白く曇ったメガネのレンズを丁寧に拭き取る。
相手が目を伏せて手元に集中しているのをいいことに、せっかくの機会だからとヤツの顔をまじまじと拝見させてもらった。
初めて彼を見た時は、特徴が無いことが彼の最大の特徴ってくらい特徴が無いと思ったけれど(しつこい?)、今はそんなことないと思えるようになった。
厚ぼったい瞼も、言い換えれば切れ長のすっきりとした一重だし、無気力な目も、言い換えれば感情の起伏の少ない冷静な目と言える。
ピシッとスタイリング剤で固めたようないかにもな髪型でもなく、サラサラを強調した無駄に爽やかな髪型でもなく、だからと言ってダサいもっさりした髪型でもない。
良くも悪くも無造作な髪型で、いかようにも取れるのだ。
鼻だって筋が通っているし、肌も汚いニキビ跡があるわけでもない。
唇の厚さも薄くなく、適度に厚くてバランスがいい。
薄い顔だから私の好みではないというだけで、そういうのが好きな人からすれば彼はいい方なのかもしれない。
そしてなにより、身長が高いのは魅力である。
「あっ、高身長。最後の魅力のひとつはこれで決まりだ」
「━━━━━はい?」
目だけを私に向けて不思議そうな顔をした彼に、気にしないで、と笑いかけた。
よしよし、とりあえず3つの魅力は見つけたぞ。
これらを食事のあとに渚にラインしよう。
今日の課題はクリアだ。