マイノリティーな彼との恋愛法
「また会いたい」なんて口が裂けても私から言えない。
なんというか、キャラ的に?
そんなしおらしい女を演じてみても、ヤツはフンと鼻で笑い飛ばすに違いない。
さっきから無言で2人並んで歩き続けていたら、神宮寺くんがぼそりと尋ねてきた。
「春野さんは休みの日って、何してます?」
「休みの日?」
なに、突然?
場つなぎの会話もままならなかったはずのこの男から、そんな気の利いた質問を聞く日が来ようとは!
そういう会話って、通常はもっと早くにするべきものだと思ってたんだけど。
まあ、私も聞かなかったからおあいこか?
「部屋の掃除したり、買い物したり、映画観たり。海外ドラマを家でひたすら見たり……かな。神宮寺くんは?」
「ウミガメが好きなので水族館行ってます」
あまりにも予想だにしなかった答えが返ってきたので、グインッと分かりやすくヤツの顔をガン見し、カッと目を見開いた。
「ウ、ウミガメ?」
「水族館の年パス買ったんです」
「……いやいや、年パスよりも!ウミガメ?」
「可愛いですよ、あの黒目がちな瞳。ふて腐れた顔が面白くて」
こいつの口が「可愛い」を発するなんて!しかもウミガメ相手に!
明日は雪が降るんじゃ……あ、冬だから降ってもおかしくない。
「今日、きっとこれが春野さんとの最後の食事になると思って、持ってきたものがあるんです」
彼が立ち止まり、鞄を開けて袋を出した。
ピンクのリボンのラッピングがしてあり、どうやらプレゼントらしいことは分かった。