マイノリティーな彼との恋愛法

５ マイノリティーな彼以外の人と。

「あれっ、春野さん？どうしたんですか、その猛烈にダサいチャーム」


オブラートに包まない風花ちゃん特有の気持ちがいいくらいの直球かつ的確な言葉は、ボーッとする私の頭にガツンと来た。
まるで机の角に足の小指をぶつけるみたいな、ショックと情けなさにぐらりと来るやつ。

入社したての新入社員にやるような教育を、今週から開始した私と風花ちゃん。もちろん教えるのは私。

仕事量を減らしたことによって風花ちゃんのミスは格段に減ったが、このままじゃ私の仕事が増えるだけで彼女にとっても私にとっても良くない。

ということで仁科課長の提案で、仕方が無いので風花ちゃんをイチから教育し直すことにしたのだ。


教育するには当然、イスをくっつけるくらいの近さで並ぶわけで。

デスクの足元に置いている私のバッグをあざとく(本人はそのつもりはないだろうけど)見つけた風花ちゃんが、面白いものを見つけたとばかりに食いついたのだ。


「あーこれね、もらいもの」


いつも出勤に使っているキャメルのシンプルなレザーバッグに、小学生がランドセルにつけていた方がしっくり来そうな緑の生き物のキーホルダー。

神宮寺くんにもらった、ウミガメの。


「それから風花ちゃん、これはチャームじゃなくてキーホルダー。チャームなんてそんなオシャレなものじゃないの」

「はぁ〜。なんでこんなのつけてるんですか？」

「だからもらいものなんだってば」


もらったからつけているだけ。
…………なんて、本当は邪な考えがあってつけているんだけど。

万が一、ヤツとビル内で遭遇した時に「あなたにもらったものをつけてますよ」アピールするため。

くそ、いじらしい自分に腹立つ！
いつからこんなに乙女になったんだ！