マイノリティーな彼との恋愛法
しかしまぁ、「猛烈にダサい」と言われても反論出来ないところが辛い。
こんなマスコット的なやつじゃなくて、大人がつけても良さそうなシックなゴールドやシルバーのキラキラしたのがよかった。
もらっておいて文句は言いたくないけどさ。
コホンと咳払いして、ご自慢のツヤツヤロングヘアーの枝毛探しを始めた風花ちゃんの太股をパシッと叩いた。
「……はい、仕事するよっ。次、入居者さんからの入金一覧と金額が間違いないか、電卓で2回計算してね」
「えー!これ2回計算するんでしたっけ?私ずっと1回しかやってませんでした〜」
「そういうのがミスに繋がるの。これからは2回やって」
「はぁ〜い」
さすがに今回はヤバいと思ったのか、彼女が新人だった時よりもわりと真剣に話を聞くようになった。
丸っこい文字でメモを取っているのも感心だ。
今回のことで彼女が変わらなかったらどうしようと思っていたけれど、それはどうやら私の取り越し苦労だったらしい。
他の若手の子たちはなんだかんだで文句を言いながらも仕事はしっかりやっているし、きっと風花ちゃんも取り残されたくない気持ちがあるんだろう。
彼女の最大の欠点は私語の多さである。
「毎日毎日、こうやって数字ばっかり見てると頭痛くなってきません?」
「んー、別に」
「早く結婚して、専業主婦になりたいって思いません?」
「んー、結婚はしたいけど相手がいないからねー」
「………………神宮寺さんは?」
ぽつりと尋ねられて、ハッと気づく。
危ない危ない!
彼女の私語につられてついついプライベートなことを話しそうになってしまった!
「あのね、あいつは本当に何もないのよ。付き合ってもいないの。分かる?知り合い程度の仲なのよ」
言いながら、うーん友人か?とも考える。
ちょっとした事情があったとはいえ、一応3回は食事した仲だし。知り合いよりは友人になるのか?
「なんだぁー。じゃあ春野さんって正真正銘一人ぼっちのアラサーなんですね〜」
「一人ぼっちとか言うんじゃない」
「だって本当のことだしぃ」
風花ちゃんの軽口に付き合うのもだんだん慣れてきた。
どうした、私。