マイノリティーな彼との恋愛法
風花ちゃんは確かに仕事は出来ない。
顔は可愛いが性格は可愛くない。
でも、だからといって性格ブスってわけでもない。
なんというか、憎めない子なんだなということが分かってきたのだ。
なんでも思ったことを口にする性格が災いして、色々得をしたり損をしたりしてきたんだろうけど、たぶん彼女は損をしていても気がつかないに違いない。
そうやって生きてきたから、天真爛漫という言葉がピッタリ当てはまる。
いつからか彼女は私に懐いてしまい、いつも1人で気ままに行っていたランチもちょこちょこついてくるようになったし、彼女の恋愛相談にも乗るようになってしまった。
恐るべし天然女子。
天然というよりも、周りを無意識に振り回すマイペースな子っていう方が合ってそうだけど。
きっと彼女も私がこんなに世話焼きだとは思ってなかったんだろうな。なんだかんだで付き合ってしまうから、話しやすい先輩だと認定された模様。
最初は「お局みたい」とか言ってたくせに!
「春野さーん、今日のランチどこ行きます〜?」
カチカチとパソコンを操作して、隙あらばランチのお店を検索している風花ちゃんに「こらっ」と喝を入れた。
「あんたの頭はランチしかないのか!仕事しろ仕事!」
「は、はぁ〜い」
「返事は短くっ」
「はいっ」
「2回計算したら次はオーナーさんの確認と入金手続き!これもダブルチェックだからね、オーナーさんの名前と金額!分かった?」
「は、はいっ」
私の日常はこうして過ぎていく。
なんの変哲もなく、ただ普通に、これまで通りに。
少し前まで、人とはちょっと違う思考回路の男と数回食事していたとは思えないほど、ゆるゆると。
ヤツのことがもう少し知りたいと思っていた自分が遠くに感じるくらい、するすると。
当たり前のように仕事をこなして帰宅する。
そんな毎日を送っていた。