マイノリティーな彼との恋愛法
週末、花の金曜日だっていうのに、私は残業をしていた。
普段はほとんど残業することなく時間内に仕事を終わらせるのがポリシーの私が、どうしてこの時間まで残っているかというと。
その理由は実に単純明快、ミスの多い後輩の分まで仕事をこなすことになったため、帳尻合わせで残業しているのだ。
時計を見ると19時。
合コンが始まった時間………………。
結局、恋愛脳の後輩たちに「春野さ〜ん!合コンの人数合わせで来てもらえませんかぁ〜?」と甲高い声で言い寄られた私。
当然のごとく即座に断ったのだけれど、ヤツらはそんなことでへこたれる人たちではない。
「えー、でも春野さん彼氏いませんよね?」
「むしろその歳で誰かに片思いしてるパターンですかぁ?」
と、余計な詮索をされた。
ここはひとつ、大人なので微笑みながら「違うの」と否定。
「そういう合コンとかもうしばらく行ってないし、若い子のノリについていけないもの」
「しばらくってどれくらいですか?」
聞き返してきたのは、仕事でミスを連発する風花ちゃんだった。
ビルの受付に座る厚化粧の2人組の受付嬢に負けず劣らず、彼女もなかなかのメイクだ。
つけまつげとタラコくちびるが彼女のトレードマーク。
「えーっと…、最後に合コン行ったの大学生の頃だから……7年前かな?」
「なっ、7年前!?……ウケる〜!7年前って、私、高一ですよ〜」
「ヘェ〜、ソウナンダ〜…」
私の微笑みがヒクヒクとひきつる。
ウケないっつーの!
どこにもウケるところなんかないでしょーが!
ていうか、いちいちウン年前っていうのを自分の年齢で計算するな!
「春野さん、そんなこと言わずに頑張りましょうよ!私たちいっつも応援してるんですよ!春野さんが結婚できますように〜って。そうじゃないと私たちが結婚するってなった時に気を遣っちゃうじゃないですかぁ」
うるうるとした黒目がちな目で私を見つめてくる風花ちゃん。
知ってるんだぞ、その目がカラコンだってことは。
意図的になのかなんなのか、彼女は私をいちいちイラッとさせる。この際拍手を送りたいくらい天才的に。