マイノリティーな彼との恋愛法


それにしても、食べる姿はよく「豪快」と言われることは多々あったけど、まさか「綺麗」なんて表現されるとは。

あ、もしかしたら食べ終わったお皿があまりにも綺麗だからそんな風に言ったとか?
それなら納得がいく!


「風花ちゃん、昴のこと見つめすぎだよ〜。まさか一目惚れなんて……」

「やっ、やだっ!する訳ないじゃないですかっ。秀行さんがいるのにっ」


まだ付き合っていないらしいが、私たちの隣の2人はどうとらえても告白にしか聞こえないセリフを口にしながら、照れ照れと頬を染めている。

付き合う前の一番楽しい時期だな、きっと。


得意のお酒もあまり口をつけられないでいると、柏木さんが整った顔で私をのぞき込んできた。


「突然こんな機会を設けてしまってすみませんでした。ビックリしましたよね」

「あっ、そ、そうですね……少し驚きました」


話の流れで秀行さんと風花ちゃんの関係を知った柏木さんが、うまいこと私と食事の場を作ってくれないかと申し出たらしい。
その時の風花ちゃんと言ったら、完全に上から目線で私を誘ってきたのだった。

「秀行さんの知り合いが、なんとなんと春野さんのことが気になってるらしいんですよ〜。どうですか、一回会ってみませんか?ヒゲ面のぽっちゃりくんかもしれませんけど。ま、でも春野さんに選ぶ権利なんてありませんもんね〜」って。

いやいや!選ぶ権利っていうか、逆に選ばれてるし!
しかもとんでもないどエライイケメンに!
まさかの御曹司、まさかの一級建築士というオプションまでついてきた!


慣れた手つきで食事をすすめながら、柏木さんが話しかけてくる。


「もともと今俺がいる事務所と、秀行の事務所は兄弟でやってるから提携していて。たまに事務所ぐるみで飲みに行ったりするんです」

「測量士と建築士は関わりが深そうですもんね」

「そうなんです、彼らがいないと俺たちの仕事が始められないので。とても重要ですね」


あー、なんかすっごい話しやすい。
このオープンな雰囲気がそうさせてるのかな。
オトナって感じだなぁ。

………………神宮寺くんとは大違い。


「春野さんのお仕事も、12月のこの時期は忙しいんじゃないですか?」

「そうですね。春と秋の引越しシーズンと今の時期は忙しいですね。案外ボーナス払いが立て込んで口座にお金が無くなっちゃって、気がついたら家賃が払えなくなってたっていう入居者さんも多かったりして。電話したり対応するのに時間がかかってしまうんです」

「お客様とやりとりする仕事は大変そうですね」

「いえいえそんな!建築士さんに比べたら底辺の仕事みたいなものです」

「そんなことありませんよ」


うわー、うわー、会話が弾む!
物腰柔らかな話し方とか、真っ直ぐに目を見て話すところとか、ハートを撃ち抜かれないようにするのに必死になる。

この人、相当モテそうだぞ。
どうして私なんかを気にかけるのか、謎でしょうがない。

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