マイノリティーな彼との恋愛法
6 マイノリティーな彼の変化。
食事会という名のお見合いもどきのようなことをして、はや1週間。
マメな性格らしい柏木さんからは、毎日ちょっとしたラインが届く。それも押しつけがましくなく、返信がしやすい内容のもの。
部屋に置いているサボテンの花が咲いたとか、駐車場で氷柱を見つけたとか。
なんだかほのぼのとして、それでいてクスッと笑っちゃうような話をくれるので、こっちまで和んでしまう。
そしてある日、無駄のない文面で食事に誘われた。
『今度の土曜日に、串焼き屋さんに行ってみませんか?』
そのラインをお昼休みに、いつもの定食屋で読んで、思わず「おぉっ」と声を出してしまった。
いよいよ2人きりで会うことになりそうだ。
断る理由もないし。
特大エビフライ定食を食べながら『よろしくお願いします』とチンタラ返信していると、向かい側から視線を感じた。
顔を上げると、風花ちゃん。
「もしかして、柏木さんからですかー?」
「あー、うん。まぁ、そうね」
「…………もしかして毎日ラインしてます?」
「だって毎日くれるんだもの」
「…………もしかして次のデート決まりました?」
「だって誘ってくれたんだもの」
「げー!春野さん突然リア充になってるしー!」
ガタンッと椅子の背もたれにオーバーな仕草で背をついた風花ちゃんは、恨めしそうな目つきでお冷をぐい飲みした。
「このままだとクリスマスは2人で三ツ星レストランでディナー決定ですね」
「クリスマスかぁ〜」
もうそういうイベントに心も踊らなくなってきた29歳。
あまりにも今まで錆びついた潤いのない生活を送っていたので、実感が湧かない。
柏木さんもクリスマスとか意識する人かしら。
「うまくいけば高級ディナーのあと、高級ホテルのスイートルームであっっまーーい夜を過ごすことになるかもしれませんしね」
真っ昼間のしがない定食屋、しかも周りはオッサンだらけの店内で、風花ちゃんは気にすることなくぶっ込んできた。
食べかけの千切りキャベツをむせながらも食べ切り、「なに言ってんの!」と彼女を睨んだ。