キミの好きな人
夏風
登校日ってやつほど無駄な日はない。
毎年この時期になると思うんだけど、なんで夏休み中に学校に来なきゃいけない日があるのか。
ホント謎だ……。そして暑い!
ホームルームも終わって帰り支度をし始めた時、1年の時から同じクラスの武田悠聖が俺に声をかけた。
「な〜〜瀬名ぁ、この後行くだろ?カラオケ。柳たちも来るらしいし」
「あ〜…うん、行くけど、オレ少し遅れて後から行くわ。柳たちに言っといて。」
悠聖が「はは〜〜ん…またあれか。」といって目を細めた。
「お前本当にカメラ好きだね〜〜、なに撮るか決まったのか?なんか悩んでたじゃん、コンクールに出す写真。」
悠聖が「お前って本当にカメラオタクだなぁ」って感じの目で俺を見てくるから、「決まりましたよっっ!」って言いながらデコピンしてやった。
「今回のは学校で撮ることにしたから。一応今朝担任に事情説明して、撮影許可ももらってある。」
俺が自慢のマイカメラを肩にかけて、さっき担任が出て行ったドアの方を指差しながら言うと、悠聖が軽く溜息をつきながら「へぇ、準備万端じゃん」とつぶやいて俺のカメラを軽くつついた。

悠聖と別れた後、渡り廊下を渡って西棟の校舎の階段を降り、中庭へ向かう。
昨日なぜか風呂入ってる時に急にぴんっ!ときたんだよな…。ここの中庭から見える景色だ!って。
写真が趣味の人なら俺以外にも急に思い出したりイメージわいたりする人っていると思うんだけど…。あ、あの景色撮りたい!とか、
あっ、今この瞬間カメラに納めたい!みたいな。
夏休みの登校日なんて暑いしダルいし昔から好きじゃなかったけど、この中庭から見える青空と奥に見えるグラウンドの景色が頭に浮かんだ時、撮りたいコレだ‼︎って思って。
そしたらなんかちょっとウズウズして、生まれて初めて夏休み中に学校来るのもいいもんかもしれないって思っちゃったもんね……。

数日前から台風が近づいて来てたから、昨日の朝方まで大雨が降ってたけど、今日は快晴!
風はまだ強いけど、これぞ台風一過ってやつだね〜〜、とか思いながら早速青空の方へとカメラを向けて撮影の準備を始める。

ファインダーを覗きながらどの角度で撮ろうか、どんなアングルだと1番イメージに近い絵が撮れるかいろいろ考えてると、グラウンドの方から野球部の練習の音が聞こえてきた。
夏の大会はもう終わってるけど、登校日も練習があるなんて、野球部の人たち偉いな〜〜とか考えつつカメラのシャッターを切った時だった。
「うわっっ!」
思わぬタイミングで突風。
台風が過ぎ去った後の強風っていきなりぶわ〜〜〜って来るんだよなぁ。
風に煽られてふらついて思わず撮れてしまったものを見て、思わず俺は「え」と、声をもらして絶句してしまった……。
…………なんじゃこりゃ。

パンツ、だな。まぎれもなく。
………女子の。

ハッと気がつくと、めっっちゃ俺ガン見されてる⁉︎って思って前を向いた。
やべ………これまじでヤバイ……

真っ赤になった顔で、制服のスカートを抑えてこっちを振り向きながら、パンツの主がめちゃくちゃ俺を睨んでた。

「へ……へ………。ヘンタイーーーー‼︎‼︎撮ったよね⁉︎今カシャっていったよな⁉︎今すぐ消去しろバカ‼︎‼︎」

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