ケダモノ、148円ナリ
「出るわけないだろ。
 まだひとつも話してない」

 そんな筋の通らない怪談話があるか、とよくわからないことを言ってくる。

「よし。
 明日実、見てこい」

「なんで私が……っ」

 意外と頼りにならないな、と思っていると、

「お前が見に行くだろ。
 枯れ尾花を霊だと思って、ひゃーっ、と間抜けに騒ぐだろ。

 そこへ、どうした? と俺が颯爽と助けに行くから行ってこい」
と言う。

「行きませんよっ」

 そんな説明を受けて行く人間が居るものか。
 
 だが、貴継は何故か、
「行ってやれ」
と言い出した。

 行ってやれ……?

「霊が待ってるから」

 ほら、とランプにもう一度、火をつけ、渡された。

 なんなんだ、もう、と思ったが、貴継が言い出したら聞かないのを知っているので、仕方なく覚悟を決め、立ち上がった。

 貴継を振り返りつつ、廊下を進む。
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