ケダモノ、148円ナリ
 少し遅れて貴継が立ち上がり、真後ろまで来た。

「なんで私の方が先なんですか」

「さっき言ったろ?
 お前が怯えないと意味ないからだ。
 
 飛びつきやすいように後ろに来てやったんだ」

 まったくもう、と思いながら、明日実は、そうっと自分の部屋を覗いた。

 奥の方で、ランプの灯りが風もないのに揺れている。

 怖いよう……。

「気をつけて行けよ。
 驚かないように」

 なにに……?
と思いながら、足音をひそませ、ランプに近づく。

 そうしておいて、なにに対して、気配を悟らせまいとしてるんだろうな、と自分で疑問に思う。

 やはり、霊だろうか?
と思っていると、

「よし、明日実。
 火を消せ」
と貴継が言ってきた。

 えーっ、と言いながらも、手にも灯りを持っているので、まあ、いいかと思い、部屋のランプを消して、廊下に戻る。

 貴継の側まで来ると、人の熱を感じて、ほっとした。
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