ケダモノ、148円ナリ
「も、もういいですか?」
と言ってみたが、貴継は無情にも、

「もう一個あるだろ」
と言い、おのれの使っている部屋を指差した。

 貴継の部屋は、開けておいたはずなのに、何故か半分ドアが閉じている。

 半開きとか怖すぎだ、と明日実は固まった。

 開くか閉じるか、どっちかにしてっ、と悲鳴を上げそうになる。

「そうっと覗け」
と言われて、空いている方の手で貴継の腕をつかみ、ドアの隙間から、そうっと中を覗く。

 また、ランプの灯りが、部屋の隅で揺れていた。

 自分のランプで部屋の中を照らそうとしたとき、その隅に置かれていたはずのランプが、ふうっと上に持ち上がった。

 明日実は、
 ひゃーっ!
と脳天を突き抜けるような悲鳴を上げる。

「……警察に通報されそうだな」
と貴継が呑気に呟いていた。

 明日実は貴継にしがみつき、叫んだ。

「おばけですーっ」
< 143 / 375 >

この作品をシェア

pagetop