ケダモノ、148円ナリ
「俺が居るのに早くから気づいていたんだろう?
 すぐ言えばいいのに、君も人が悪いな」
と顕人は言う。

 いや、どっちがだ、と貴継は思っていた。

「気付いていたのなら、さっさと息の根を止めにくればいいのに。
 おかしな真似をしていたぶって」

 まあ、確かに、百物語が始まったときには、生きた心地がしなかったろうな、と思う。

 自分としては、暗くなったタイミングで、そうっと逃げてくれてもよかったのだが。

「生殺しにして脅すとか。
 君が今、お宅の社長にしてるのと同じだな」

 調べたんだよ、と顕人は言う。

「お父さんが現社長に追い出された恨みがあるのかもしれないが。
 ああいうやり方はよくないと思うが」
といきなり説教を始めた。

 いや、お前、家に黙って入り込んだ詫びとか、説明はないのか。

 根っからの長男体質だな、と思う。

 年下で間違った行動をとっている人間を見ると、とりあえず、世話をしたり、説教したくなるようだ。
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