ケダモノ、148円ナリ
黙っていると、
「不満そうだな」
と顕人は言ってきた。
「当たり前だ。
誰に聞いても、あんたは穏やかで人当たりがいいと言う。
明日実に至っては、あんたを神みたいに思ってる。
その口やかましくて、おのれを顧みないのが本来の性格なのか?」
と訊いたが、いや、違う、と言う。
「君にだけだ。
君に腹を立てているだけだよ。
何故、明日実は君のような男を選んだんだ」
「あんた、従兄だかなんだか知らないが、自分は結婚して海外に行くんだろ?
今まで面倒見てた明日実をなんの予告もなく放り出したあんたに、ごちゃごちゃ言われる筋合いじゃないな」
と言ってやると、顕人は黙る。
「あのー、珈琲入りましたよー」
と明日実が遠慮がちに顔を覗け、声をかけてきた。
「おにいさまは、ミルクだけでしたよね」
ああ、と顕人が頷く。
なにもかもわかり合ってるみたいでムカつく、と思ったが、明日実はちゃんと自分がなにも居れないことはわかってくれていたようで。
顕人のところにだけ、ミルクとスプーンが置いてあった。
「不満そうだな」
と顕人は言ってきた。
「当たり前だ。
誰に聞いても、あんたは穏やかで人当たりがいいと言う。
明日実に至っては、あんたを神みたいに思ってる。
その口やかましくて、おのれを顧みないのが本来の性格なのか?」
と訊いたが、いや、違う、と言う。
「君にだけだ。
君に腹を立てているだけだよ。
何故、明日実は君のような男を選んだんだ」
「あんた、従兄だかなんだか知らないが、自分は結婚して海外に行くんだろ?
今まで面倒見てた明日実をなんの予告もなく放り出したあんたに、ごちゃごちゃ言われる筋合いじゃないな」
と言ってやると、顕人は黙る。
「あのー、珈琲入りましたよー」
と明日実が遠慮がちに顔を覗け、声をかけてきた。
「おにいさまは、ミルクだけでしたよね」
ああ、と顕人が頷く。
なにもかもわかり合ってるみたいでムカつく、と思ったが、明日実はちゃんと自分がなにも居れないことはわかってくれていたようで。
顕人のところにだけ、ミルクとスプーンが置いてあった。