ケダモノ、148円ナリ
 玄関を出た貴継は顕人に言った。

「あの指輪、相当したろう。
 明日実は金銭感覚がおかしいのか、よくわかっていないようだが。

 就職祝いにポンとやるようなものではないようだが」

 顕人は黙っている。

「結婚相手への指輪のついでにあれを買ったんじゃなくて、逆じゃないのか?

 明日実の指輪を買うついでに、そりゃ、結婚相手にも買わなきゃなって感じだったんじゃないのか?」

「……彼女への指輪は買ってない。
 婚約指輪も結婚指輪も母親と二人が見に行って決めたそうだ。

 俺は金を振り込んだだけだよ」
と顕人は言う。

「あんた、なんで、明日実になにも言わずに、他の女と結婚するんだ?」

 あの指輪を見てから、ずっと疑問に思っていたことを訊いてみた。

「結婚は親が勝手に決めたことだ。
 逆らわなかったのは……

 俺は明日実の、実の兄だからだ」

「今、なんか言ったか?」
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