ケダモノ、148円ナリ
 



「お帰りなさい。
 おにいさまは帰られましたか?」

 いろいろ考えていた貴継だが、明日実と目を合わせた瞬間には笑っていた。

「……なんですか?」
と明日実が赤くなる。

「いや……。
 いいもんだな、お帰りって言われるの」

 やっぱり、此処が俺の家だ、と明日実の腰をつかまえ、抱き上げる。

「ひゃっ。
 もうっ。
 なんなんですかっ」
と言う明日実に、

「一緒に風呂に入るか」
と言うと、

「嫌ですよっ。
 家で一緒に入るくらいなら、まだ、温泉の方がまだよかったです」

 大自然の中の混浴とかなら、まだ、と言ってきた。

「どんな露出狂だ。
 他の男に見せたいとか」

「貴方が混浴って言ったんですよ」

「家族風呂だ」
「同じです」

「同じじゃない。
 お前が見せていいのは、俺だけだ」

 そこで、
「まさか、『おにいさま』には見せてないだろうな」
と言うと、

「えっ、なっ、なにをですかっ?」
と動揺する。
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