ケダモノ、148円ナリ
 



 日曜日。

 朝起きた明日実は、あのイルカの指輪をはめようかどうしようか迷っていた。

 結局、はめずに、
「おはようございます」
とリビングに行くと、ソファで新聞は読んでいた貴継がすぐに、

「何故、指輪をやってない」
と言う。
 
 その眼光の鋭さに、すぐさま部屋に取って返した明日実は指輪をはめてきた。

「おはようございます」
と頭を下げると、

「……お前は長生きするタイプだな」
と言われた。

 貴方に言われるとは思いませんでしたよ、と思ったが、まあ、調子良さそうに見えて、こだわるところはこだわるのかな、と思っていた。

 あの屋敷のこととか。

 去り際、蜘蛛の巣の張ったシャンデリアを見上げ、
『人から取り上げておいて放置か』
と呟いていた貴継の顔を思い出す。

「おにいさまにいただいた指輪はしなくていいのか?」
と新聞を読みながら貴継が言ってきたので、

「え? しましょうか?」
と言うと、

「いや、つけたら、手を焼くか切断してやろうかと思ってたんだが」
と何処に持っていたのか、バーナーを出してくる。
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