ケダモノ、148円ナリ
ケダモノが膝を抱えています
 



 もう駄目です。

 誰か助けてください……。

 お風呂上がりに明日実はまた、馬にさせられていた。

「ひひん……」

 力なく鳴きながら、子ども、結構重たい、と思っていた。

 ……貴継さんよりはマシだけど。

 誰かと携帯で話していた鏡花が言う。

「ほら、あんたたち、もう寝なさい。
 明日実は明日、会社なんだから」

「オッケー。
 おやすみー」

「おやすみなさい、明日実ちゃん」

 二人とも、鏡花が怖いのか。
 彼女が一言言っただけで、さっと明日実から降りた。

 ふいーっとラグに座り込むと、

「ほら、明日実。
 呑みなさいよ」
と鏡花が言う。

 いつの間にか、テーブルには鏡花が作ってくれたらしいツマミと酒が並んでいた。

「あっ。
 大人だけずるいっ」
という子どもたちに、鏡花が睨みをきかす。

「いいから、寝なさいって。
 あなたー、この子たち、寝かしつけてー」

 鏡花が一声かけると、今度はご主人がさっと立ち上がり、子どもたちを洗面所に連れていった。

 よく訓練された軍隊のようだ……。
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