ケダモノ、148円ナリ
 



 入社式の朝、明日実は入社式らしくちょっとお硬い感じのスーツに袖を通した。

 クローゼットについている大きな鏡に映して見ていると、ひょいと肩の辺りに貴継の顔が覗く。

「ほう。
 よく似合うじゃないか。

 顔が綺麗だとシンプルな服の方が映えるってほんとだな」
と言ってくる。

「ケ、ケダモノが来ましたっ」
と明日実は貴継から逃げようとしたが、肩を抱かれて、止められる。

「そうか。

 じゃあ、お前はそのケダモノにめちゃくちゃにされた女だな。
 もう人生終わったな」
と言いながら、明日実の頭にキスしてくる。

「もう近寄らないでください~っ」
と明日実は赤くなり、しっし、と貴継を払おうとする。

「貴継さんは、やっぱりケダモノでした~っ」

「あそこまで我慢させたお前が悪いだろう」

 そう、しれっとした顔で言ってきた。
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