ケダモノ、148円ナリ
「あっ、私がっ。
 駅まで車で送っていただくんですし」
と言うと、

「俺は、お前の部屋に泊めていただいている」
とこちらの口調を真似て言ってきた。

「ま、会社まで送ってやってもいいんだが。
 ……ちょっとまずいだろうからな」

 少し考えながら、貴継は言う。

「はあ、そうですね。
 新入社員ですし」

 この人、平気で玄関に横付けとかしそうだからな、社長の車とか止まってても。

「あの」
と歩幅の違う貴継にレジで追いつき、明日実は言った。

「ありがとうございます。
 私、此処で朝ごはんとか食べてみたかったんですけど。

 ひとりで喫茶店とか入れないので。
 お友達が泊まりに来たときくらいしか。

 だから、今日は嬉しかったです」
と言うと、

「じゃあ、毎朝、此処で食べるか」
と貴継はお金を払いながら言ってくる。

「い、いえ、それはちょっと」
と言うと、レジを打っていた女の店員さんが笑い、

「またどうぞー」
と言ってくれた。





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