【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「……後藤くん?」
さっき行ってしまったはずの後藤くんが、後ろからさっと現れた。
僕とって……?
後藤くんの顔を見ると、瞳が何かを訴えているように見える。
合わせろってこと?
後藤くん……もしかして、助けてくれた……?
「は、はい、そうです」
こくりと首を縦に振って、後藤の言葉に乗った。那月くんは表情すら崩さなかったけれど、一瞬ピクリと眉が動いたように見えた。
「二人って、そんな親しい仲でしたっけ?」
そう聞いてくる声に、どこか棘があるように感じるのは気のせい?
「お前には内緒」
答えられない私の代わりに、さらりとそう言い放った後藤くん。
さっきまで、頭がいっぱいいっぱいで、逃げ出したい気分だったのに……後ろにいてくれる後藤くんが頼もしくて、安心する。
本当に、心の底から後藤君に感謝した。
一瞬那月くんの表情が崩れて、ぐっと歯を食いしばったのがわかった。
これ以上なにも言うつもりはないらしく、「へぇ……」とだけ零した那月くん。
ちらりと後藤くんを見ると、こっそりとウインクを送られた。
また、助けられてしまった……。
「そうだ花京院さん」
「え?」
「日曜のこと決めたいので、今日お昼一緒にどうですか?」
口裏を合わせるためなのかな。後藤くんの言葉に、断る理由もなく頷く。